国際ワン切り詐欺とは?増加する背景や注意すべき国番号、対策を紹介

見慣れない国際番号からの着信には、安易に応じないようにしましょう。いわゆる「国際ワン切り詐欺」の可能性があり、万が一かけ直すと高額な通話料を請求される、詐欺のターゲットにされやすくなる、といったリスクがあります。
本記事では、国際ワン切り詐欺が増加している背景、注意すべき国番号、そして被害を防ぐための具体的な対策について詳しく紹介します。
目次
国際ワン切り詐欺とは

国際ワン切り詐欺とは、1回の呼び出し音で電話を切る「ワン切り」を国際電話で行い、着信履歴を残すことで折り返しの電話をかけさせる詐欺の手口です。たとえば「+」から始まる海外の電話番号から突然電話がかかってきた場合、国際ワン切り詐欺の可能性があります。
国際電話に折り返してしまうと高額な電話料金を請求され、その電話料金の一部が海外の通信会社を通じて犯罪グループに還元される仕組みとなっています。
ここでは、国際ワン切り詐欺の背景や仕組みについて紹介します。
国際電話番号が使われている背景
これまで特殊詐欺には、IP電話番号(050から始まる番号)が多用されてきました。IP電話番号は比較的簡単に入手できたため、詐欺グループにとって好都合だったのです。しかし、2024年からIP電話番号の取得に本人確認が必要となり、悪用することが難しくなりました。
このような背景から、新たな手口として国際電話番号が利用されるようになっています。そのため、国際電話番号を悪用した詐欺の事例が増加しており、警察や関係機関が注意を呼びかけているのが現状です。

警視庁「令和6年上半期における特殊詐欺の状況について」を加工して作成
国際ワン切りを含む特殊詐欺で使われる可能性のある国番号
警察庁の調べによると、特殊詐欺で使用された国際電話番号のうち、以下の国番号からの着信事例があります。着信があった際は注意しましょう。
- アメリカ・カナダ(+1)
- イギリス(+44)
- ノルウェー(+47)
- スウェーデン(+46)
- ドイツ(+49)
- ルーマニア(+40)
- オーストリア(+43)
- ポーランド(+48)
- デンマーク(+45)
- スイス(+41)
身に覚えのない海外の電話番号や、特殊詐欺に使用されやすいアメリカ(+1)の番号には特に注意が必要です(下記グラフ参照)。ただし、詐欺グループはさまざまな国の電話番号を使用するため、上記以外の国番号であっても警戒を怠らないようにしましょう。

警察庁「特殊詐欺の電子マネー型交付形態における認知件数及び国際電話番号による既遂件数の推移について」を加工して作成
国際ワン切り詐欺の手口
国際ワン切り詐欺の手口はシンプルですが巧妙です。まず、詐欺グループは海外の電話番号から短時間の着信を入れ、相手が折り返すことを狙います。折り返した場合、高額な国際通話料が発生し、その一部が詐欺グループの収益となる仕組みです。
折り返し後に自動音声が流れ、「少々お待ちください」といったアナウンスで通話時間を延ばそうとするケースもあります。長時間通話を続けることで、さらに高額な料金を発生させるのが狙いです。このような手口に引っかからないためにも、知らない国際電話には安易に折り返さないことが大切です。
ワン切り詐欺とは?具体的な手口や詐欺に遭わないための対策を解説
国際電話番号を悪用したそのほかの詐欺事例
国際電話番号を悪用した詐欺は、ワン切り詐欺だけではありません。ここではほかの詐欺事例をいくつか紹介します。
架空料金請求詐欺
架空料金請求詐欺は、実際には利用していないサービスや商品の料金を請求する詐欺の手口です。国際電話番号を悪用し、「サービスが利用できなくなる」「支払っていない料金がある」といった自動音声を流し、ターゲットを騙して金銭を振り込ませようとします。
架空請求詐欺については、次の記事を参考にしてください。
サポート詐欺
サポート詐欺は、偽のウイルス感染画面や警告音を使って不安を煽り、サポート窓口へ電話をかけさせる手口です。記載された番号に電話をかけると、詐欺グループが応対し、「ウイルスを除去するために必要な手続きを案内する」として金銭を騙し取ります。
近年では、国内の電話番号ではなく国際電話番号を利用する手口も確認されています。サポート詐欺については、次の記事を参考にしてください。
国際ワン切り詐欺に折り返してしまったらどうなる?
国際ワン切り詐欺の電話に折り返してしまうと、単に高額な通話料を請求されるだけでなく、さまざまなリスクを伴います。
ここでは、国際ワン切り詐欺に折り返してしまった場合に起こる具体的なリスクを紹介します。
高額な通話料を請求されてしまう
国際ワン切り詐欺の電話に折り返すと、通常よりも高額な国際通話料金が発生し、高額な通話料を請求されることになります。先述のとおり、詐欺グループは特定の国や地域の通信会社と提携し、高額な通話料金の一部を受け取る仕組みを構築しています。
通話時間が長くなるほど詐欺グループの収益も増加するため、絶対に折り返さないことが大切です。
犯罪グループのリストに電話番号が載ってしまう
国際ワン切り詐欺の電話に折り返してしまうと、詐欺グループに「この電話番号は応答する可能性が高い」と認識されてしまいます。結果として、被害者の電話番号が「カモリスト」と呼ばれる名簿に登録される可能性があります。
カモリストとは、詐欺グループが過去に騙されたり、応答しやすいと判断した電話番号をまとめたリストのことです。ほかの詐欺グループ間でも売買・共有され、別の詐欺のターゲットにされる可能性が高まるため、むやみに知らない国際電話に折り返すのは避けましょう。
国際ワン切り詐欺の被害を防ぐための対策

国際ワン切り詐欺の被害を防ぐには、事前の対策が重要です。ここでは、国際ワン切り詐欺の被害を防ぐための具体的な対策を紹介します。
見覚えのない電話には出ないようにする
国際ワン切り詐欺の被害を防ぐためには、見覚えのない電話に出ないことが基本です。特に「+」から始まる国際電話番号で、身に覚えのない着信があった場合は注意が必要です。知人や取引先であれば、メッセージやメールで連絡が来ることが多いため、不審な電話には応答しないようにしましょう。
また、着信履歴が残っていても、折り返しの電話は避けることが大切です。詐欺グループは折り返しを狙っているため、知らない番号に不用意に電話をかけると、高額な通話料を請求される可能性があります。迷った場合は、インターネットで番号を検索するなどして、発信元の確認を行うとよいでしょう。
着信拒否設定を行う
繰り返し不審な国際電話がかかってくる場合、スマホの着信拒否機能を活用することが有効です。特定の番号や不明な発信者をブロックすることで、詐欺電話を未然に防ぐことができます。
以下に、AndroidとiPhoneで着信拒否を設定する方法を紹介します。
Androidの場合
- 電話アプリを開く
- 右上にあるアイコン「︙」をタップし、「設定」を選択
- 「ブロック中の電話番号」を選択
- 「不明な発信者」のスライドをタップ
iPhoneの場合
- ホーム画面を表示し、電話アプリを選択する
- 履歴・よく使う項目・留守番電話のいずれかを選択する
- 着信拒否を設定する番号の「i」マークを選択する
- 下部へスクロールしたら「発信者を着信拒否」をタップする
なお、ご利用の機種・メーカーによって設定方法は異なります。詳しい設定方法は、利用している機種の公式Webサイトをご確認ください。
国際電話の設定解除を行う
普段から国際電話を利用しない場合は、スマホの設定で国際電話の発信を制限することも対策の一つです。たとえば、ドコモでは「WORLD CALL」の解約手続きを行うことで、国際電話を発信できないようにすることが可能です。
以下に、ドコモの国際電話の設定解除方法を紹介します。
- 「My docomo」にアクセス
- 「お手続き」をタップ
- 「海外」をタップ
- 「海外へかける(WORLD CALL)」をタップ
- 「解約」をタップ
セキュリティ対策サービスを活用する
セキュリティ対策サービスを利用することも大切です。たとえば、ドコモの「あんしんセキュリティ スタンダードプラン」の「迷惑電話対策」機能では、不審な番号からの着信時に警告画面を表示し、危険を事前に知らせてくれます。
電話に出なかった場合でも、着信履歴の通知に「危険な電話の可能性がある」と表示されるため、折り返す前にリスクを判断できます。特に、国際ワン切り詐欺は、折り返すことで高額な通話料を請求されるため、事前に確認できる機能は非常に有効です。
まとめ
国際ワン切り詐欺とは、海外の電話番号から1回だけ着信を残し、相手に折り返しの電話をかけさせる詐欺の手口です。折り返すと高額な通話料を請求されるだけでなく、詐欺グループに「応答しやすい番号」と認識され、別の詐欺被害に遭うリスクも高まります。
被害を防ぐためには、知らない海外番号には出ないこと、折り返さないことが重要です。また、スマホの着信拒否設定や国際電話の発信制限、セキュリティ対策サービスなどを利用して、安全を確保しましょう。