ダークウェブとは?アクセスするリスクや対策方法を解説
ダークウェブとは、一般的な検索エンジンには表示されない匿名性の高いWebサイトのことです。匿名性が高いことから、違法な商品や情報などが取引きされているケースが多く、興味本位でアクセスすると犯罪に巻き込まれる可能性があります。犯罪に巻き込まれないためには、ダークウェブに関する正しい知識を身につけておくことが大切です。
そこでこの記事では、ダークウェブの概要や取引きされる内容、利用するリスクについて解説します。ダークウェブによる被害を防ぐ方法も併せて紹介するため、Webのセキュリティ対策に関心がある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
ダークウェブとは?
ダークウェブについて、耳にしたことはあるものの、詳しく知らないという方も多いでしょう。ここではダークウェブの概要や関連語句、誕生した背景について解説します。
ダークウェブの概要
ダークウェブとは、Googleなどの通常の検索エンジンでは表示されないWebサイト群のことを指します。通常のWebサイトとは異なり、プライバシーや匿名性を維持する目的で作られた特別なネットワーク上に構築されています。
この特殊な環境では、一般的なブラウザや検索エンジンからのアクセスができません。そのため、閲覧するためには専用のブラウザをダウンロードしてアクセスしなければなりません。
また、その匿名性の高さから、犯罪の温床となっている側面もあります。違法取引きや個人情報の売買の場として利用されることがあります。
ダークウェブの関連語句
ダークウェブを理解するためには、関連する用語を知ることも重要です。ここでは、ウェブの階層を表す「サーフェスウェブ」と「ディープウェブ」について説明します。これらの概念を把握することで、ダークウェブの位置付けがより明確になるでしょう。
サーフェスウェブ:誰でもアクセスできるコンテンツ
サーフェスウェブ(表層ウェブ)とは、インターネット上で公開されている一般的なWebサイトやコンテンツを指します。検索エンジンによってインデックス化される(データベースに含まれ検索されるようになる)ことで、多くの人がアクセスできる環境が整えられています。
具体的にはニュースサイト、ブログ、オンラインショップ、SNSなどのソーシャルメディアなどが挙げられます。インターネット全体のなかでもアクセスしやすいコンテンツが多く、一般的に広く利用される傾向にあります。
しかし、インターネット上のすべての情報がサーフェスウェブに含まれているわけではありません。パスワードで保護されたサイトや企業の内部ネットワーク、一部の人がアクセスできるデータベース、そして後述するディープウェブといった匿名性の高いコンテンツは、サーフェスウェブには含まれません。これらは特定の条件や認証が必要なため、一般のインターネット利用者がアクセスするのは難しい領域です。
とはいえサーフェスウェブは、インターネット利用者が日常的にアクセスする情報の大部分を占めており、情報収集やコミュニケーションの主要な場所となっています。
ディープウェブ:検索エンジンからはアクセスできないコンテンツ
ディープウェブ(深層ウェブ)とは、一般的な検索エンジンでは検索・発見されにくい、インターネットの深層部分を指します。サーフェスウェブとは対照的に、ディープウェブにはさまざまな制限や認証が設けられているため、一般のユーザーが自由にアクセスできない仕様になっています。
具体的には企業の内部サイト、学術論文データベース、パスワード保護されたウェブページなどが挙げられます。これらは、検索エンジンによってインデックスできない仕組みになっているため、サーフェスウェブとは異なる領域で形成されます。閲覧するためにはパスワードなどの認証が必要となるのが特徴です。
また、「ディープウェブのなかで特に匿名性や違法性の高い情報・商品の取引きが行われている領域」がダークウェブとなります。つまり、ディープウェブの一部がダークウェブとして悪用されているともいえます。
このように、ディープウェブはサーフェスウェブとは全く異なる性質を持っており、ダークウェブとも関連性が高いという側面があります。ただし、学術研究や企業活動においては重要な情報源となっている場合もあるため、必ずしも悪用されているわけではないことは認識しておきましょう。
ダークウェブが誕生した背景
ダークウェブの起源は、軍事技術にあります。アメリカ軍が開発した通信の匿名性を高めることを目的として開発された技術が基盤となり、時代の流れとともに一般まで広まりました。
日本では、2012年に発生したパソコン遠隔操作事件を契機にダークウェブの存在が多くの人に知られるようになりました。この事件で犯人がダークウェブを利用していたことが明らかになり、社会に衝撃を与えたのです。
このように、ダークウェブは軍事技術から派生し、現在ではその特性のため犯罪にも悪用されるリスクがあることを認識しておく必要があります。
ダークウェブでは何が取引きされる?
ダークウェブでは、具体的にどのような情報やコンテンツが扱われているのでしょうか。ダークウェブの危険性をより理解するために、いくつか例を紹介します。なかには合法的な取引きも存在しますが、多くは違法性の高いものが中心といわれています。
麻薬や大麻、児童ポルノなど違法性があるもの
ダークウェブでは、麻薬や大麻などの違法薬物、児童ポルノ、拳銃など違法な商品が取引きされています。これらの商品は通常のインターネット上では取引きが困難であるため、匿名性の高いダークウェブが利用されているのです。
当然ですが、これらの違法商品の取引きは法執行機関の厳しい取り締まりの対象となっており、購入や販売に関与した場合には重大な法的責任を問われるリスクがあります。
フィッシング詐欺やウイルス感染などによって漏洩したユーザーの個人情報
ダークウェブでは、フィッシング詐欺やウイルス感染によって漏洩した個人情報が取引きされています。住所や電話番号、クレジットカード情報、銀行口座情報など、さまざまな個人データが売買の対象となっているのです。
これらの情報は、主にフィッシングサイトを通じて収集されます。悪意のある第三者が実在する企業を名乗り、リンクを貼ったメールを送信することでフィッシングサイトに誘導します。そこでユーザーに向け個人情報の入力を促し、入力された情報は即座に盗まれて、悪意のある第三者によってダークウェブ上で取引きされるという流れです。
また、スマホがウイルスに感染したことによって個人情報が盗まれ、ダークウェブ上で取引きされるケースもあります。
このような個人情報の流出は、プライバシーの侵害や不正利用といった深刻な被害につながる可能性があります。そのため、オンライン上での個人情報の取扱いには細心の注意が必要です。
サイバー攻撃やサーバーへの不正侵入によって流出した企業の機密情報
ダークウェブでは、企業などの機密情報が取引きの対象となっています。これらは主に、サイトやOSの脆弱性を悪用したサイバー攻撃によって入手された情報です。攻撃者は不正にログインし、企業のデータにアクセスします。
このような手法で得られた情報には、顧客データ、財務記録、製品開発計画などの重要なデータが含まれている可能性があります。企業にとって機密情報の漏洩は深刻な問題であり、競合他社への情報流出や、ブランドイメージの低下、さらには法的責任を問われるリスクも否めません。
アプリやOSのアクティベーションコード
ダークウェブにおいて、アプリやOSのアクティベーションコードの取引きが増加傾向にあります。アクティベーションコードとは、新しいデバイスやアプリケーションを使用する際に必要となる認証用のコードのことです。このコードを入力することで、ソフトウェアの正規ユーザーであることが確認され、製品のすべての機能が利用可能になります。
ダークウェブで取引きされるコードの多くは不正に入手されたものや、不正侵入されプログラムを盗み見られたり、改ざんされたりしたものである可能性が高いです。また、正規のライセンスを購入せずにソフトウェアを使用することは、開発者の権利を侵害するだけでなく、マルウェア感染などのリスクも伴うことを認識しておきましょう。
なお日本の法律では、他人のアクティベーションコードを無断で使用することは著作権法違反に該当し、違法行為とされています。悪用すれば罰則の対象となる可能性があります。
他人のクレジットカード情報や偽造のクレジットカード
ダークウェブでは、フィッシング詐欺やデータ漏洩などの手段で不正に入手された他人のクレジットカード情報も取引きの対象の一つです。悪意のある者たちは、この情報をもとに偽造クレジットカードをつくり、さらなる不正取引きに利用しています。
こうした行為は深刻な犯罪であり、被害者に多大な損害を与える可能性があるでしょう。クレジットカードの所有者は定期的に利用明細を確認し、不審な取引きがあれば即座に金融機関に報告することが重要です。
マルウェアを作成するツール
ダークウェブでは、マルウェアを作成するためのツールも取引きされています。このツールは、パソコンやスマホに感染し、個人情報を盗み取るプログラムを作成するために使用されます。
悪意のある第三者は、このようなツールを利用して、標的の端末に侵入し、パスワードやクレジットカード情報などの機密データを収集します。作成されるマルウェアの種類は多岐にわたり、感染することで情報を盗み取る「トロイの木馬」や、主にパスワードを盗み取る「キーロガー」などが代表的です。
ダークウェブを利用するリスク
ダークウェブの利用にはさまざまなリスクが伴います。ここではダークウェブの利用における2つの重大なリスクについて解説しているので、適切な対策を講じるためにもぜひチェックしてみてください。
ウイルスに感染するリスク
ダークウェブにアクセスしたり、ファイルなどをダウンロードするとウイルス感染のリスクが非常に高くなってしまいます。ウイルスに感染すると個人情報の窃取や、端末の遠隔操作、さらには暗号通貨などが不正に悪用されるおそれがあります。
犯罪に巻き込まれるリスク
ダークウェブでは、犯罪に巻き込まれるリスクが高くなっています。
理由としては、匿名性が高いため、取引き相手の信頼性を確認することが困難な点が挙げられます。もし商品やサービスの対価を支払っても、何も受け取れない可能性があるでしょう。やりとりを通じて気づかないうちにマルウェアに感染し、自身の端末が他者への攻撃に悪用されるケースもあります。
さらに、入力してしまった個人情報が「なりすまし」などの手口に悪用されるケースも報告されています。これらの犯罪に関与してしまうと、法的責任を問われる可能性もあります。ダークウェブの利用は、このような深刻なリスクを伴うことを十分に認識し、安易なアクセスは避けるべきです。
ダークウェブによる被害を防ぐ方法
ダークウェブによる被害を防ぐためには、適切な対策を講じることが重要です。ここでは、三つの主要な対策方法について詳しく説明します。これらの対策を実践することで、ダークウェブに関連するリスクを軽減できます。
セキュリティ対策サービスを活用する
ダークウェブによる被害を防ぐ効果的な方法としてまず挙げられるのは、セキュリティ対策サービスの活用です。セキュリティ対策サービスには、危険なサイトにアクセスした際に警告を表示したり、個人情報が流出していないか監視してくれる機能などが備わっています。
ドコモの「あんしんセキュリティ」の「危険サイト対策」機能は、スマホの操作中にフィッシングサイトなどの危険性の高いサイトにアクセスした際に警告を表示し、アクセスをブロックします。
さらに、「あんしんセキュリティ(プライバシー)」のダークウェブモニタリング機能は、ダークウェブ上に個人情報が流出していないかを確認し、流出を検知した場合に通知を行います。また、流出してしまった場合の対処法についてアドバイスを受けられるため、あんしんしてWebを利用することができます。
個人情報の管理を徹底する
ダークウェブでは、不正に入手した住所、電話番号、クレジットカード情報などの個人情報が取引きされています。そのため、被害を防ぐには、個人情報の管理を徹底することが極めて重要です。
もし、何らかの理由でダークウェブにアクセスしてしまった場合、個人情報の入力を求められても応じないようにしましょう。もし入力してしまうと、個人情報が不正に流出する可能性が高まります。
また、アクセスしてしまったあとも、継続的に個人情報が流出していないか確認することが大切です。アクセス履歴やカード利用履歴をチェックし、不審な点がないか確認しましょう。
さらに、パスワードの定期的な変更も効果的な対策の一つです。これらの習慣によって個人情報の安全性を高めることにつながり、ダークウェブによる被害のリスクを低減できるでしょう。
アクセスしない
ダークウェブによる被害を防ぐ最も確実な方法は、そもそもアクセスしないことです。ダークウェブの閲覧には専用のブラウザが必要となるため、一般的なブラウザや検索エンジンから迷い込むようなことはありません。
ダークウェブには違法な取引きや危険な情報が多く存在し、アクセスしただけでも犯罪に巻き込まれる可能性が高まります。また、意図せずにマルウェアに感染したり、個人情報が流出する危険性も含んでいます。
このような理由から、安易にアクセスすることは避けるべきです。代わりに、一般的なWebサイトや信頼できる情報源を利用し、必要な情報を入手することをおすすめします。ダークウェブへのアクセスを控えることで、多くの潜在的なリスクを回避できるでしょう。
まとめ
ダークウェブは匿名性が高く、違法な取引きが行われている特殊なインターネット領域です。違法な商品や不正流出した個人情報、企業の機密情報など、さまざまなものが違法取引きされています。ウイルス感染や犯罪に巻き込まれるリスクがあることを理解しておきましょう。
ダークウェブに関連する被害を防ぐには、あんしんセキュリティなどのセキュリティ対策サービスの活用や個人情報の管理徹底などを行いましょう。また、最も安全なのは、ダークウェブにアクセスしないことです。安全なインターネット利用のため、これらの対策を心がけましょう。