NFT詐欺とは?代表的な手口と詐欺に遭わないための対策を紹介
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NFT詐欺の手口は多岐にわたり、偽物のNFTを販売したり、偽のマーケットプレイスに誘導して個人情報を盗み取ったりと、巧妙化しています。なかには、プロジェクトを立ち上げて資金を集めたあと、持ち逃げするような悪質なケースも存在します。
詐欺の被害に遭わないためにも、具体的な手口と対処法を正しく理解しておくことが重要です。本記事では、代表的なNFT詐欺の手口を紹介し、被害に遭わないための対策を解説します。
目次
NFT詐欺とは
NFT詐欺とはどのようなものか、具体的にイメージできない人も多いでしょう。ここではまず、NFT(エヌエフティー)とは何かを説明し、NFT詐欺の概要について詳しく解説します。
NFT(エヌエフティー)とは
NFTとは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略で、デジタルアートや音楽、ゲームのアイテムなど、デジタルコンテンツにおける唯一無二の「所有権」を証明する技術のことです。
今までは、デジタルデータは簡単にコピーできていたため本物と偽物の区別が難しく、価値をつけるのが困難でした。しかし、「ブロックチェーン」という改ざんが難しい技術を用いることで、デジタルコンテンツに唯一無二の証明書を与え、本物の所有者を明確にします。この技術により、デジタルコンテンツが希少価値を持つようになり、高額で取引されることもあります。
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たとえば、従来のデータの管理システムの場合、上図左のように第三者機関が中央管理者として取引履歴を管理し、信頼性を担保していました。そのため、第三者機関はサイバー攻撃などの脅威に備えるための高度なセキュリティ技術やコストを要することになります。
一方ブロックチェーンの場合、上図右のようにすべての取引きを全員が共有することで信頼性を担保する仕組みになっています。一部のユーザーのパソコンやスマホに障害が起きた場合にも、システム全体を維持することが可能です。
NFTのブロックチェーンでは、一度送金(支払い)が行われると、その取引内容がブロックチェーン上に記録され、改ざんや取消しができません。そのため、この特性のおかげで信頼性を保つことができる一方、詐欺などに悪用され送金されると回収が困難です。本記事で紹介する詐欺の手口を理解するために、これらの特性を覚えておきましょう。
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NFT詐欺の概要
NFT詐欺とは、NFTを悪用した詐欺の手口です。主な手口としては、大きくわけて2つあります。
1つ目は悪意のある第三者が正規の作品を不正にコピーし、NFT化して販売するというものです。本物そっくりの偽物を販売することで、購入者を騙し、金銭をだまし取ります。
2つ目は偽のマーケットプレイス(NFTを売買するWebサイト)に誘導し、個人情報や暗号資産ウォレットの情報を盗み取るというものです。巧妙に作られた偽サイトで入力された情報を悪用して金銭を盗み取ります。
NFT市場は2020年に大きく盛り上がり、その後も数億円規模の市場を維持していることから、詐欺グループの格好のターゲットとなっています。
NFT詐欺の代表的な手口
NFT詐欺の手口は巧妙化しており、被害に遭わないためには、NFTや暗号資産に関する正しい知識を身につけることが重要です。
ここではNFT詐欺の代表的な手口を4つ紹介します。
アーティスト・作者へのなりすまし詐欺
デジタルアーティストやクリエイターになりすまし、作品を無断でNFT化して販売する詐欺です。本物そっくりのNFTを作成するため、見分けるのが困難であるとされています。
たとえば、人気アーティストのデジタルアートを無断でNFT化し、NFTマーケットプレイスで販売するケースが考えられるでしょう。購入者は偽物と知らずに高額で購入してしまう可能性があります。
NFTマーケットプレイス側も対策を強化し、偽物のNFTを排除しようと努めていますが、巧妙化する詐欺手法とのいたちごっこが続いています。
偽のマーケットプレイスに遷移させるフィッシング詐欺
本物のNFTマーケットプレイスそっくりに作られた偽のWebサイトに誘導し、ユーザーのログイン情報や暗号資産ウォレットの情報を盗み取るフィッシング詐欺の手口も存在します。
具体的には、「セキュリティ上の問題が発生しました」といった偽の警告メールを送りつけ、記載されたリンクにアクセスすると偽のマーケットプレイスにつながるケースがあります。そこでログイン情報を入力してしまうと、アカウントを乗っ取られるリスクがあります。
また、偽のNFTマーケットプレイスでNFTを購入してしまい、代金を支払ったのにNFTを受け取れないといった被害も発生しています。
出口詐欺とも呼ばれる「ラグプル」
ラグプルとは、開発者がNFTプロジェクトを立ち上げ、投資を募って資金を集めた後、突然プロジェクトを放棄し、資金を持ち逃げする詐欺です。人の下に敷かれているラグ(Rug)を引っ張る(Pull)ことをイメージしてラグプル(Rugpull)と呼ばれています。
開発者はSNSで積極的に情報発信したり、コミュニティを形成したりして、投資したい人を惹きつけます。そして、多くの投資家から資金を集めた後、連絡を絶ち、マーケットプレイスから姿を消すという手口です。
投資詐欺の一種の「パンプアンドダンプスキーム」
NFTはSNSでの宣伝などによって、価値を引き上げることが可能です。パンプアンドダンプスキームとは、詐欺グループが特定のNFTを大量に購入し、価格を意図的に吊り上げる手口です。
「パンプアンドダンプ」という言葉は、英語の「Pump(パンプ)」と「Dump(ダンプ)」が由来です。「Pump」は情報操作などで価格をつり上げることを指し、「Dump」は価格が上がったあとに売り抜くことを意味します。
具体的には、詐欺グループ内で暗号資産などを大量購入したり、SNSで情報を拡散したりして、NFTプロジェクトに人気があるように演出します。そして、価格が高騰したところで一般投資家に高値で売りつけます。
その後、詐欺グループが売り抜けると、価格が暴落し、購入者は価値のないNFTを抱えることになります。パンプアンドダンプスキームは、株式市場などでも見られる古典的な投資詐欺の手口ですが、NFT市場でも横行しています。
NFT詐欺に遭わないためには
近年、NFTはアートや音楽、ゲームなど、さまざまな分野で活用され、一般の人でもNFTを購入できる環境が整ってきました。手軽にデジタル作品を所有できるようになり、NFT市場はますます拡大しています。
しかし、NFT市場はまだ新しい市場であり、規制が整っていない部分も多く、詐欺グループの標的になりやすいという側面も持ち合わせています。NFTや暗号資産に関する正しい知識やセキュリティリスクを理解していないと、詐欺被害に遭いかねません。
NFT詐欺から身を守るために、以下のポイントに注意しましょう。
出品者や販売元に不審な点がないか確認する
NFTを購入する前に、出品者や販売元の情報を確認しましょう。信頼できる出品者や販売元から購入することが重要です。具体的には、出品者の公式サイトやSNSアカウントをチェックし、活動実績や信頼性を確認しましょう。
NFTマーケットプレイスでの評価やレビューも大切です。出品者の情報に不審な点や矛盾点がある場合は、購入を見送る方が賢明です。
偽物を判断するサービスを活用する
NFTの真贋を判断できるサービスを活用するのも有効な手段です。基本的にはNFTの購入前後に利用するサービスが多く、ブロックチェーン上の取引履歴などを分析して、偽物のNFTを識別してくれます。
偽物のNFTを購入してしまうと、金銭的な損失だけでなく、著作権侵害などの法的問題に巻き込まれる可能性もあるでしょう。NFTの真贋を判断するサービスを利用することで、詐欺の被害に遭うリスクを軽減できます。
不審なメールに記載されたURLにアクセスしない
NFT詐欺では、フィッシングメールを使って偽のWebサイトに誘導するケースが多く見られます。たとえば、NFTマーケットプレイスや暗号資産取引所を装ったメールが届き、「アカウントに異常ログインがありました」などと不安を煽り、偽のサイトへのアクセスを促す場合があります。少しでも不審に感じたら、メールを削除し、公式サイトから情報を確認しましょう。
NFT詐欺は、不審なメールに記載された偽サイトへのアクセスがきっかけとなるケースも想定されます。そのため、不審なメールに記載のURLに安易にアクセスするのは避けましょう。
ドコモの「あんしんセキュリティ スタンダードプラン」の「迷惑メール対策」機能は、不審なメールを自動で判別し、専用のフォルダに振り分けてくれます。不審なメールを開くことなく削除できるため、NFT詐欺だけでなく、不審なメールによるフィッシング詐欺のリスクを減らすことができます。
また、「危険サイト対策」機能では、アクセスしようとしたサイトが偽サイトだった場合に警告を表示します。事前に偽サイトの閲覧を回避できるため、詐欺の被害を未然に防げるでしょう。
まとめ
NFT詐欺は、デジタルコンテンツの所有権を証明するNFTを悪用した詐欺です。偽物のNFTを販売したり、偽のマーケットプレイスに誘導して個人情報を盗み取ったりする手口が横行しています。
NFT詐欺に遭わないためには、出品者や販売元の情報を確認したり、偽物を判断するサービスを活用したりすることが重要です。また、不審なメールに記載されたURLにアクセスしないように注意することや、セキュリティ対策サービスを活用して危険なサイトへのアクセスを防ぐことも有効な対策です。